老舗旅館をリノベーション
アート、建築、グリーンが融合
JR前橋駅から車で5分ほど、けやき並木が美しい国道50号線を官庁街に向かって進むと、白壁にカラフルなタイポグラフィが配されたファサードが見えてきます。これはローレンス・ウィナーによるコミッションワークで、2020年12月に誕生した「白井屋ホテル」を彩る作品の一つです。
ここは、300年以上の歴史をもつ老舗旅館で1970年代にホテルに変わったのち2008年に廃業した白井屋の跡地。取り壊しの危機にあったところ、前橋の街の再生に取り組んでいた前橋出身の起業家でアイウエアブランド「JINS(ジンズ)」創業者、田中仁さんの目に留まり、2014年頃からホテルのリノベーション構想の計画が始まりました。
それから約6年半、建築家・藤本壮介さんが改装・新築を手がけた世界に類を見ないホテルが完成。多彩なアーティストたちの共演が注目を集めています。
国道に面したヘリテージタワーの1階にはオールデイダイニング、メインダイニング、フロントがあり、上階には客室が。吹き抜けの空間には、現れた躯体を生かしたレアンドロ・エルリッヒの光のインスタレーションが広がっています。敷地の北側は点在するサウナ施設やコーヒーショップ、ベーカリー、タルトショップ、バーなどを擁するグリーンタワー。周囲の街並みに開かれた、豊かな植栽が特徴です。
オープン時からコロナ禍に見舞われ、サービスのあり方を考え続けてきたと話すのは代表取締役CEOの矢村功さん。おしぼり導入についてはホテル開業の3カ月ほど前から検討が始まったといいます。
「おしぼりはお客様とホテルとのファーストコンタクトですから、ネガティブな印象にならないものを選ぼうと現場スタッフたちとも協議を重ねました」