REIONレポート
 Vol.9 – 白井屋ホテル

REIONの導入事例をご紹介する国内レポート第9弾は、群馬県前橋市にある「白井屋ホテル」。著名な建築家やアーティストが参加した話題のスポットです。REIONやおしぼりをどのように活用されているのか、代表取締役CEOの矢村功さんやスタッフの皆さんにお話をうかがいました。

老舗旅館をリノベーション
アート、建築、グリーンが融合

 JR前橋駅から車で5分ほど、けやき並木が美しい国道50号線を官庁街に向かって進むと、白壁にカラフルなタイポグラフィが配されたファサードが見えてきます。これはローレンス・ウィナーによるコミッションワークで、2020年12月に誕生した「白井屋ホテル」を彩る作品の一つです。
 ここは、300年以上の歴史をもつ老舗旅館で1970年代にホテルに変わったのち2008年に廃業した白井屋の跡地。取り壊しの危機にあったところ、前橋の街の再生に取り組んでいた前橋出身の起業家でアイウエアブランド「JINS(ジンズ)」創業者、田中仁さんの目に留まり、2014年頃からホテルのリノベーション構想の計画が始まりました。
 それから約6年半、建築家・藤本壮介さんが改装・新築を手がけた世界に類を見ないホテルが完成。多彩なアーティストたちの共演が注目を集めています。
 国道に面したヘリテージタワーの1階にはオールデイダイニング、メインダイニング、フロントがあり、上階には客室が。吹き抜けの空間には、現れた躯体を生かしたレアンドロ・エルリッヒの光のインスタレーションが広がっています。敷地の北側は点在するサウナ施設やコーヒーショップ、ベーカリー、タルトショップ、バーなどを擁するグリーンタワー。周囲の街並みに開かれた、豊かな植栽が特徴です。
 オープン時からコロナ禍に見舞われ、サービスのあり方を考え続けてきたと話すのは代表取締役CEOの矢村功さん。おしぼり導入についてはホテル開業の3カ月ほど前から検討が始まったといいます。
「おしぼりはお客様とホテルとのファーストコンタクトですから、ネガティブな印象にならないものを選ぼうと現場スタッフたちとも協議を重ねました」

目の前を流れる馬場川の土手をイメージしたというグリーンタワー。
JINSや国内外のマーケティング会社でキャリアを積んでこられた代表取締役CEOの矢村功さん。

アートホテルの質を保ちながら
コロナ禍でのサービスを模索

 様々なおしぼりや冷温庫を比較検討した結果、REIONと布おしぼりを導入することになった同ホテル。盛夏にはフロントにREIONを設置し、チェックイン時に冷たいおしぼりでお客様をお迎えしているそうです。
「最初はラウンジでもカウンターにREIONを置いて布おしぼりを提供していたんですよ。でも、ありがたいことに非常に多くのお客様がいらしてくださりオペレーションの課題が出てきてしまって。カジュアルなオールデイダイニングとしてのサービスができる紙おしぼりを急遽探しました」
 そう振り返るのは、「the LOUNGE(ザ・ラウンジ)」のマネージャー澤井陽子さん。いろいろなサンプルを取り寄せて検討していた中、オーナーの田中さんからFSXのおしぼりを勧められ、アロマプレミアムを常温で提供するようになったといいます。
「紙おしぼりでもアートホテルとしての上質さを保てる点が決め手でした。以前布おしぼりを出していたことをご存知の常連の方にも好評。お店の都合でサービスを変えたという受け止めはなく、ほっとしています」
 モーニング(予約制)、ランチ、ティータイムからディナーまで営業する街のリビングルームのようなザ・ラウンジ。小さなお子様連れのママ友ランチ、ティータイムのスイーツがお目当ての方、大人の方々が夜の会食に、と一日中様々なお客様が訪れます。
「以前のような接客ができなくなった歯がゆさはありますが、おしぼりとお水をお出しすることから始まるお客様とのコミュニケーションはコロナ禍でも変わりません。スタッフ一同、マスクで口元は隠れてしまうけれど目で伝わるはずですからしっかり笑顔で接客しようと心がけています」

「肩肘張らずにリラックスしていただきたい」と話す、ザ・ラウンジ マネージャーの澤井陽子さんはバスガイドやウエディングプランナーとして働いてきた接客のプロ。
夏場はシトラールの香りを採用。「袋を開けたときは爽やかな香りがするけれど食事の邪魔にならないところがいいですね」と澤井さん。

提供するおしぼりからも
ストーリーが感じられるように

 一方、ホテルのメインダイニングである「the RESTAURANT(ザ・レストラン)」では布おしぼりを使用中です。
 地元の食材をふんだんに使い独自の解釈で郷土料理を再構築した「上州キュイジーヌ」のディナーコースを中心に、ゆったりとした食事の時間を提供しているザ・レストラン。スタッフの方々は「手を使っていただくお料理もあるので、肌触りが良く、しっかりした厚みのおしぼりは最適」と評価してくださっています。
 おしぼりは180匁のショコラ(ダークブラウン)を購入され、群馬クリーンタオル(FSXのパートナー企業)がクリーニングを担当。抗ウイルス・抗菌のVB加工( https://www.virusblock.jp/ )を施してお届けしています。
 ビニール袋に入った状態で届くおしぼりは、オペレーションをスムーズにし、上質なおもてなしを提供するために、いったん取り出してオリジナルアロマを控えめに香らせ、REIONで保冷/保温。これは「おしぼりの清潔さを保ちながらも、ホテルの空間と同じ香りを纏わせることで一貫したストーリーを紡ぎたい」という思いから。現在はソムリエの児島由光さんがセレクトした珪化木のトレーにおしぼりをのせて提供し、料理の傍でトータルな空間演出を支えているそうです。
 セキュリティの都合で写真は載せられませんが、バックヤードにはREIONブラックLサイズが設置されています。「保冷や保温のスピードが早くて温度の切り替えも簡単。容量も多くレストランにとっては非常に使いやすく、これまで見たことのないデザイン性の高い冷温庫」と経験豊富なスタッフの方々にも好評です。

前橋の魅力を発信する拠点として
「わくわく」を紡いでいく

 週末だけオープンする「the BAR MATCHA-TEI(ザ・バー 真茶亭)」でも同様のおしぼりが活用されています。世界の名店で研鑽を重ねたヘッドバーテンダーの木村堅さんは、カクテルやフード類のみならず、照明や音楽、香りなど、お客様の五感に触れるあらゆる要素を独自の審美眼で厳選。しかし、当初使っていたおしぼりには納得がいっていなかったといいます。
「あとはおしぼりさえ満足できれば完璧なのに、という状況でした。そんなときレストランで出しているおしぼりの感触が非常に良いことを知り、バーでも出せるように調整してもらいました」
 おしぼりに触れてリラックスできるよう、季節を問わずホットで提供すると決めているという木村さん。その日店内で焚くナチュラルアロマをおしぼりの表面にスプレーし、石巻工房に特注した木製トレーにのせてお客様の前へ。
「おしぼりは、お水よりも先にお客様に最初に触れるものですから清潔なのは当たり前。その上で肌触りや温度にこだわって極上の体験をご提供したい。たかがおしぼり、されどおしぼり。こうした細部の質を上げていくことが大切だと思っています」
 最後に代表の矢村さんに今後の展望をうかがうと「わくわくを紡ぐ」というビジョンを話してくださいました。
 白井屋ホテルでは各部屋に「上毛かるた」を置いているそうです。44枚の札に名所旧跡やゆかりの人物などが綴られた、群馬の人は必ず遊んだことがあると言われるもの。中でも矢村さんが象徴的だとおっしゃる「ら」の札には「雷(らい)と空風(からっかぜ) 義理人情」とあります。
「現代アートというと敷居が高く感じるかもしれませんが、私たちは義理人情を大切にしてお客様をお迎えしたい。アートや建築がお目当ての方でも、ここから前橋への興味がめぶき、また来ていただけたら嬉しいです。そんなわくわくするような拠点を目指して、私たちスタッフも毎日心を弾ませながらお客様に接したいと思っています」

数々の受賞歴があり、シンガポール国立美術館内のバー開業など、国内外のバー立ち上げやメニュー開発に従事してきたヘッドバーテンダーの木村さん。
杉本博司さんと榊󠄀田倫之さんが率いる新素材研究所が手がけた「真茶亭」の空間が週末限定でバーに。奥には旧白井屋から移築した茶室があり待合にもなる。